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ぼけと利他

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ここ数年、ケアに関する本が存在感を増しているのには気づいていたけれど、自分が介護(という狭義のケア)の当事者ではないこともあって、正直いまいちピンと来ていなかった。

でもこの、ひたすら思考が刺激される素晴らしい往復書簡を読み進めるうち、少しずつ、いまケアについて考えることの重要性がわかってきたように思う。

相手を思い通りに動かそう… 人々のニーズを刺激してモノを買わせよう… そんなふうに私たちの社会には、計画や思惑、ひいては経済合理性に沿って人を理解したり、動かそうとする力が強く働いているように思う。行動経済学とか、流行ってますし。

でも、ボケを持つ人にはそういった計画や思惑は通じない。

彼らと向き合うには、偶然や余白、溜め、そんなものに身を任せ、過去から未来に向かう直線的な時間軸は捨て「いま・ここ」で起きていることに集中し、同時に身体や場に蓄積する長い時間に思いを馳せ、他者と身体感覚が「ズレながらシンクロする」…そんな、現代社会を生きる私たちとは異なるあり方が求められるよう。

そしてそこには、疲弊したわたしたちの社会を考え直すヒントが確かにあるように思う。そういえば、小川公代さんも『ケアの倫理とエンパワメント』の中でこんなふうに言っていた。

近代社会にとって、あるいは資本主義社会にとって、「ケアの倫理」が”異質”だからこそ、今の行き詰まった社会の状況を変えていく原動力になると信じている。

他者は思い通りになどならない。そういう地点から、どうやって他者と共に生き、どういう社会を作っていくかを考えるヒントが、この本にはたくさん詰まっているように思う。
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きっと、「わたし」を構成するものは、私が思う以上に多様に満ちています。多幸感に包まれた深いぼけに触れることがよくあるのですが、それは、「わたし」を構成する多様なものの存在と交感しているのではないでしょうか。

ー『ぼけと利他』(伊藤亜紗・村瀬孝生)
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伊藤亜紗 (著), 村瀨孝生 (著)

ぼけは、病気ではない。
自分と社会を開くトリガーだ――

ここを出発点に始まった、美学者と「宅老所よりあい」代表の往復書簡。その到着点は…?
二人の「タマシイのマジ」が響き合った、圧巻の36通。

自分のしたことが本当の意味で相手のためになる、というのは、おそらく私たちが思うよりもずっと不思議で、想定外に満ちた出来事なのでしょう。ほとんど、奇跡だと言ってもいい。――伊藤(はじめに)

お年寄りたちは、思想信条に依らないアナキズムと、人格や宗教に依らない許しを発揮し、場をつくり始めると言えるでしょう。そのように時折シンクロします。大方は揉めながらバラバラのままに一緒にいる。いるしかない。なんか、まじめで滑稽でしょ。好きなんです。――村瀨(3通目)

出版社 ‏ : ‎ ミシマ社 (2022/9/15)

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